ZEROの製品開発 その1

ZEROの製品開発 その1
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片持ちフォーク式の経緯台が、一般に対して多く普及するようになったキッカケは、ポルタ経緯台の発売がきっかけです。標準的なアリガタアリミゾでの鏡筒との接続を採用し、その使いやすさと汎用性から多くのユーザーに愛用されています。以後様々なメーカーから、フォローオンプロダクツが発売されました。そういう意味で、弊社の新型架台『ZERO』も、ポルタに追従する製品と言えます。

●後発製品として求められること
後発製品として、製品を発売する場合。先発品と同じようなものを作ってもほとんどインパクトはありません。架台の場合は、積載重量、コストパーフォーマンス、使いやすさ、汎用性、振動減衰の速さ、デザインなど様々な性能や要素で、先発品を上回らなければなりません(全て上回るのが理想ではありますが、それはなかなか出来ない相談ですね。)

先発品を超える手法として、禁じ手ですが、デッドコピーというお隣の国が使う手法があります。同じような性能のものを、圧倒的に安い金額で市場に出すのです。開発費もほとんどかかりませんし、安い労働力にものをいわせて、圧倒的に安い金額で市場に製品を供給することが可能です。もともとの製品はかわいそうなことに、市場から追い出されてしまう事があります。

例示すると天文業界で有名な例は、GP赤道儀だったりします。今だにGP赤道儀のクローンの系譜は、セレストロンやシンタをはじめとする中国に関係のあるメーカーの赤道儀にその名残を見ることができます。片やオリジナルのGP赤道儀は、無くなってしまったわけですから、その影響は甚大です。

じゃあ、スコープテックはどうするのか。ということなんです。ポルタのデッドコピーみたいなのを、より安い工場で作る。これならほとんど開発費をかけずに、めっちゃ安い金額で市場にポルタもどきを供給することは可能です。ある程度、儲ける事もできます。リスクも少ない『濡れ手に粟商売』。

しかし、これでは色々言われてしまします。色々なところから。特許や意匠登録に引っかからなければ、OKなんでしょうか。いやいやスコープテックとしては、プライドがありますからそんな事はしたくもないし、最初からそんなことは一切考えませんでした。


●片持ちフォーク式経緯台のメリット
・鏡筒前後バランスを取ると、シーソー型経緯台のように、望遠鏡の仰角の変化により前後バランスが崩れない。>>フリーストップの実現。

●片持ちフォーク式経緯台の弱点
・シーソー型経緯台に比べると、アームがかさばる。持ち運び時に甚だ邪魔である。
・アームの強度不足により、固有振動数が低くなりやすい。>アームを無くした改良品の存在
・重量物である望遠鏡本体を1つのアームで支えるため、アームの剛性が不足すると振動が多い架台になってしまう。
・アームの角度を調整できるようにしたいが、そこが強度的な弱点となる場合が多い。
・軸の強度を上げようとすると、軸が大径化し、重量がかさんでくる。

●軸の重要性
高度軸には、軸に対して垂直方向に力が掛かるため、重量のある鏡筒を搭載した場合に、その部分が弱点となる。また水平軸には軸方向(垂直方向)に力が掛かるが、搭載鏡筒の大きさによっては、水平方向のバランスを取ることが出来ないのでやはり軸に対して軸の左右で非対称の力が加わることになる。
必要な強度に応じて、水平軸と高度軸の設計を別にすることも考えられるが、それはコストアップに繋がってしまう。


●需要の調査。
8から10センチクラスのアポクロマート鏡筒を持っていて、普段は赤道儀に載せて撮影などに使っているユーザーも、時には、経緯台に載せて気軽に星を見たいという需要がある。しかし、既存の片持ちフォーク式の経緯台は、強度的が足らず、10センチのアポクロマート鏡筒を搭載するには厳しいものが多い、まず振動の問題がある。低倍率での観察であれば我慢ができるが、ちょっと惑星を高倍率で見たいという時は、口径8センチの鏡筒でも、振動の影響を大きく受けてしまう。振動でピント合わせにも一苦労。さらにフリーストップとは言っても、動きは渋めで気持ち良いフリーストップが実現できていない。T型の強度のフリーストップマウントを購入してみたものの、大きめの鏡筒を載せても十分な強度があるのは良いが、構造上重たい鏡筒を載せると反対側にバランスウェイトを付けることになる。そうするとウィエイトも含めた赤道儀と重量はさほど変わらなくなってしまう。ユーザー側にそんな悩みがあることがわかってきた。

●市場で求められる架台のアウトライン
T型のマウントのように、滑らかに動くフリーストップマウントで、なおかつ高倍率で使う時にやはり便利な微動装置付きの、軽量で振動の少ない頑丈な片持ちフォークマウントを作れば売れるかもしれない!ということが分かってきた。
それに加えて、アームの角度が可変で調整できて、なおかつ軽量で折りたたみできる機能があればいう事ないなと考えた訳です。

●求められる架台の要素のリストアップ

☆架台の仕様として必要な項目
・極めて滑らかでピタリと止まるフリーストップ
・バックラッシュの少ない正確な動きの微動装置
・振動の収まりが早い高剛性なフォークアーム
・フォークアームの振出角度が調整できる
・軽量
・工具なしで分解できてコンパクトになる

☆機能的に求められるもの
・様々な他社製三脚に取り付けできる
・さまざまな他社製鏡筒バンドやアリミゾ、アルカスイスなども取り付けられる。
・今後の発展性を見込んでいる

リストアップは簡単ですが、相反する事が要求されていて実現は簡単ではない事が分かるでしょう。

思えば、ポルタ登場から10年以上が経過しても、片持ちフォーク式の経緯台でそんな製品がないというと、それは作るのがとても難しいことが理由であった。より強度があるものを目指した製品はあるが、なかなか実現できていないのが現状だったようです。

●軸の強度とアームの剛性の確保がポイント
片持ちフォークの水平軸と高度軸を比べた場合、軸に対してねじり方向に大きな力が掛かる高度軸の方がより強度を要することがわかる。

そこで、最初の設計の段階で、高度軸の必要な強度を考え、軸を設計し、それを両軸に利用することとした。軸の構造には秘密があります。架台のフリーストップのテンション調整を、一般的には軸の横からネジで押すタイプのものが多いのですが、他社と同じ軸の構造では、基本的に軸を大型化するしか強度を上げるしかありません。大径化は大幅な重量増をもたらします。

反対側から軸全体を引っ張る構造にする事で、ガタや緩みをとり、軸の内部で接触面積をふやし、小さい軸でもガタが出ない構造にしました。
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軽量化を目指した軸の小径化は、別の問題も産み出しました。ウォームホイルを小径化するしかないのです。ウォームホイルの小径化は、微動軸のフィーリング悪化を招きます。これには随分悩まされましたが、ウォームケースの高精度化、ウォームの大径化、ギアー系(ウォームホイルとウォーム)の高精度化など、様々なポイントで設計と加工精度を見直し、1つ1つ解決していきました。どこでヒントを得たかというと、それは、かつて素晴らしい望遠鏡を多数送り出した、日本精光研究所(ユニトロン)の6センチ赤道儀です。ウォームホイルは平ギアに近いコストのかからない小径ウォームホイルを採用していましたが、ウォームの直径を大きくすることにより、素晴らしく滑らかな微動の感触を得ていたのです。

●片持ちのフォークアーム
片持ちフォークアームの剛性は、軸の強度とともに架台全体の振動にとても大きな影響を与えます。軸がいくら頑丈でも、アームの剛性が低いと振動は収まりません。
当初の設計でもそれなりの強度は出ましたが、試作を作ってみて実際に鏡筒を載せてみると、既存の製品より優れた振動減衰が出来ていましたが、ユーザーの皆さんが要求する高い目標値にたいしては、まだアームの剛性が足りず随分苦労しました。細かい話は以後に譲りますが、まずは当初の微動軸の位置が問題でした。アーム外側に設置することにより、アームの厚み一杯にリブの高さを上げることができるようになりました。外観上は、微動軸の位置を内側にした方がアーム先端の形状が丸くなりスマートなのですが、内側にすると、ウォームホイルとウォームのクリアランスを調整するイモネジを内側に設置するしかなくなる、ツールのアクセスの関係で補強リブの高さに制限が出てしまうのです。
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剛性を考えると外側にした方が断然有利ということになり設計を変更しました。数度の設計変更をしながら、試作を繰り返し、最新のエンジニアリングを取り入れ、さらにアーム内のリブを含めた構造自体を、最新のCADシステムで解析し、応力が集中する部分がないように再設計を行いました。
その間に重量はほとんど変わらずに、数倍の剛性アップを果たしたのです。

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続く

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