2019年7月の星空情報

2019年7月の星空情報です。
遅れていた西日本もようやく梅雨入りとなりました。梅雨と言ってもずっと雨が降っているわけではなく、数日に一度は晴れることもありますから、諦めずに晴れ間を狙い星空観察、天体観察を楽しんでくださいね。


●今月のハイライト
7月の注目すべき天文現象をリストアップします。

1.先月6月11日に衝を迎えた木星に続き、7月10日土星が衝となり、両惑星が観測に絶好条件です。
2.7月28日から前後数日 みずがめ座δ(デルタ)流星群が極大条件です。


〈目次〉
★7月の惑星たち
★7月の天文現象カレンダー
★7月の星空情報
★ラプトル50とラプトル60が湘南T-SITEの店頭で期間限定で展示販売を開始しました
★おすすめテレビ番組
★イベント情報


★7月の惑星たち
水星 ○→× 先月6月24日に東方最大離角となり夕方の西空低空に見えている。7月月初も観察できる。
金星  × 太陽に近すぎて観察は困難
火星 × 観測は難しい。
木星 ◎ 夜半に南の空でとても明るく見えています。観測絶好シーズン!!
土星  ◎ 夜半の南の空で明るく見えています。観測シーズン!!
天王星 △明け方に東の空に見えています。
海王星 ○未明の南の空。 

★7月の天文現象カレンダー
7月3日(水)新月 前後数日は一晩中月明かりの影響がなく、星空の観測に絶好。

7月5日(金)から7月7日(日)第93回乙女高原星空観望会です。

7月7日(日)七夕 今年の七夕は、海や山など市街地の光に邪魔されない場所へ行けば、月明かりに邪魔されずに天の川と織姫星と彦星が見えそうです。晴れると良いのですが。

7月9日(火)上弦の月 夕方から夜半前に見える半月です。月の観察の好機です。クレーターがとてもよく見えます!

7月10日(水)土星が衝。地球から見て、太陽と正反対の位置に来る。真夜中に南の空で落ち着いた黄色味を帯びた輝きで見える。

7月15日(月)海の日

7月17日(水)西日本で部分月食が観察できます。満月 クレーターはあまり見えませんが、海の部分の色や、クレーターから四方八方に広がる光条が良く見えます。

7月21日(日)水星が内合 地球軌道の内側かつ太陽と地球の間に位置


7月25日(木)下弦の月 深夜過ぎから明け方に見える半月です。月のクレーター観察の好機です。天王星が西矩。

7月28日(日)早朝日の出前に月齢25.3の細い月にヒアデス星団の星が隠される星食


★7月の星空情報
全ての図版は、クリックやタップをするとさらに大きく表示できます。

☆7月10日(水)土星が衝となり、地球から見て、太陽と正反対の位置に来る。観測の好機!
リング惑星土星

ラプトル50やラプトル60などの小型望遠鏡でみるとこんな感じに見えます。
土星木星こんな風に見える

地球の公転軌道の外側で、太陽を回る外惑星である土星は、『衝』のころに地球との距離が最も近くなるので、地球から見える大きさが最も大きくなり、もっとも明るく輝くようになります。

現在土星は、真夜中に南の空で落ち着いた黄色味を帯びた色に輝いて見えています。明るさは、0.1等級(1等星の約2.3倍の明るさ)、天の川を挟んで隣合って見えている木星に比べると約1/10の明るさですが、都市部でも十分見える明るさで見えますから探すのは簡単でしょう。

衝当日の地球との距離は、13億5000万キロ 地球から太陽までの距離の約9倍の距離になります。光のスピード(秒速30万キロ)でも74分以上も掛かる距離です。仮に地球から時速800キロのジェット旅客機で土星に行くと約200年も掛かるとても遠いところにあります。

 土星の直径は、地球の直径の約9.5倍の大きな惑星でガスが主成分です。土星本体をぐるりと取り巻く巨大なリングが特徴的ですが、リングの幅に地球を並べると20個ほど並べられる程大きなものです。衛星の数は64個もありますが、小さな望遠鏡でも見えるのは衛星タイタンだけです。

 口径6センチのラプトル60のような望遠鏡で観察すると、リングがA環とB環の二色に別れて見えます。口径8センチのアトラス80で観察すると条件が良ければ、A環とB環の間に黒いレコードの溝のような線を観察できる事があります。カッッシーニの空隙と呼ばれるリングの隙間です。土星本体の模様は、木星のように明瞭ではありませんが、注意深く観察すると一本縞模様と極付近が暗くなっている様子が観察できるでしょう。

とても軽い惑星で、比重は水よりも軽く、土星が入るような巨大な水槽を用意したとすると、水にプカリと浮いてしまうほどです。

土星観察のコツ
現在土星は、いて座近辺にいます。天の川を挟んで反対側のさそり座近辺には、土星以上に明るく目立つ木星がいますので、木星を目印に土星を見つけると良いでしょう。南中(南の空で一番地平線から高い位置にくる時)する前後1時間ほどしか条件良く観察できる時間がありません。地平線からの高さがない(低い位置に見えている時)は、地球の大気の影響が大きくシャープには見えません。ですから南中する前後1時間を目安に観察すると良いでしょう。
今年の夏は土星と木星が見頃

土星や木星がどうしても見つけられない人は、月が近くを通過していくタイミングで見つけると良いでしょう。7月13日から7月16日はそのチャンスです。

月が通りかかる

★ 速報ニュース 木星の地上からの最新の観測に関して
土星のすぐ近くに見えている木星ですが、これまで段々小さくなっていた、木星の大赤斑(目玉のような模様)ですが、縮小が止まり少しだけ大きくなっているという観測結果が報告されてきました。(ちなみに目で見ても先月と比べて大きくなっているのは分かりませんが...)この後再び縮小に転じるのか、じわじわと大きくなっていくのか、今しばらく観測の継続が必要ですが、これ以上小さくなると小型望遠鏡での観測は難しくなってくるので、このまま大きくなって欲しいと、個人的には考えています。
巨大ガス惑星

☆部分月食が西日本で観察できます。
7月17日の明け方に南西諸島、九州地方、四国地方(東部のごく一部を除く)、中国地方(東部を除く)の西日本で部分月食が観察できます。月食とは、地球の影の中に月が入る天文現象です。今回は明け方に西の地平線に月が沈む前に起こります。日の出前からはじまりますが、少し欠けたところでどんどん空が明るくなり、月食の途中で月も沈んでしまいますから観測条件的にはあまり良いとは言えません。

☆7月28日(日曜日)早朝夜明け前にヒアデス星団食
夜明け前の東の空低い位置に、晩秋から冬にかけて見頃を迎えるおうし座が上がってきています。そのおうし座のVの字の星の並びがヒアデス星団と呼ばれる大きな散開星団です。そのヒアデス星団の星を7月28日(日)の早朝に細い月が隠す星食と呼ばれる天文現象が観察できます。潜入の30分前には、東の地平線上に上がってきたおうし座の方向を見て頂きます。あまり月に近づき過ぎてからですと、月の光に幻惑されて肝心の隠される星が見つけづらくなります。まず月を見つけてください。その方向に双眼鏡や低倍率の接眼レンズをセットした天体望遠鏡を視野に入れ観察してください。
先ずおうし座δ1星が隠され、その次におうし座δ2星が隠されます。

ヒアデス星団星食ガイドマップ

ヒアデス星食拡大

各地の隠される時間(潜入時間)と出てくる時間(出現時間)がかなり違いますので、下に記します。
δ1潜入
札幌 午前3時3分
仙台 午前2時53分
東京 午前2時48分
大阪 午前2時46分
福岡 午前2時45分
那覇 午前2時34分

δ1出現
札幌 午前4時4分
仙台 午前3時56分
東京 午前3時51分
大阪 午前3時46分
福岡 午前3時42分
那覇 午前3時31分

δ2潜入
札幌 午前3時29分
仙台 午前3時23分
東京 午前3時19分
大阪 午前3時15分
福岡 午前3時11分
那覇 午前3時5分

δ2出現
札幌 午前4時32分
仙台 午前4時20分
東京 午前4時13分
大阪 午前4時10分
福岡 午前4時6分
那覇 午前3時48分





☆みずがめ座δ流星群
7月28日の前後数日間に渡り見える流星群です。今年は月明かりの影響もなく条件良く観測ができます。8月半ばの三大流星群のひとつであるペルセウス座流星群は、今年は満月に近い月灯りに邪魔されて条件的に最悪なので、流星数はペルセウス座流星群ほど多くないやや小規模の流星群ですが、こどもたちの夏休み期間中でもあり、家族で楽しんで頂きたいと思います。
流れ星は、ガイドマップ内の茶色文字『みずがめ座δ南』で示されている放射点を中心に四方八方に放射状に飛びますが、放射点の位置が低いので放射点から打ち上げ花火のように頭上に向かって飛ぶ流れ星が多いでしょう。流星のスピードは、夏のペルセウス座流星群や冬のふたご座流星群より遅くゆったりと飛びます。
みずがめ座δ流星群

★ラプトル50とラプトル60が湘南T-SITEの店頭で期間限定で展示販売を開始しました。
T-SITEとは、蔦屋書店を中核としたライフスタイル提案型商業施設。代官山や湘南ほか全国5カ所で展開されているショッピングコンプレックスです。単に物を売っている従来型の店舗とは異なり、本を中心に分野別にコーナー展開がなされており、売り場担当者やバイヤーにより十分に吟味された魅力ある数々の製品が魅力あるコーナー展開で展示販売されているユニークな販売店です。既存の量販店が、他店と同じ品揃えでインターネット通販との厳しい価格競争に晒される中で売り上げが伸び悩む中で、T-SITEは既存店舗ではほとんど取り扱いがないこだわりの商品や製品も並んでいて、訪れた人それぞれが色々な刺激を受ける売り場になっています。
ラプトル50とラプトル60は、アウトドアーコーナーで展示販売されています。お近くの方は是非ご覧になってみてください。
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★おすすめテレビ番組
コズミックフロントNEXTは、NHK BSプレミアム3の宇宙番組です。
次回(7月4日(木)夜10時)は、今見頃の『土星』です。土星の最新の情報が盛りだくさん!
ぜひお見逃しなく!

番組WEBサイト
https://www4.nhk.or.jp/cosmic/

各日夜10時から
7月4日(木)土星
8月1日(木)天王星、海王星、冥王星


★イベント情報

●2019年 乙女高原星空観望会暫定日程

第93回 7月5日(金)から7月7日(日)
第94回 8月9日(金)から8月11日(日)
第95回 8月30日(金)から9月1日(日)
第96回 9月27日(金)から9月29日(日)
第97回 10月25日(金)から10月27日(日)
第98回 11月22日(金)から11月24日(日)

最新の日程は下記リンク先をご覧ください。
http://otome.sblo.jp/

●2019年田奈観望会スケジュール
7月13日(土) 月齢10.7 土星と木星
8月17日(土) 月齢16.4 土星と木星
9月7日(土) 月齢8.1 土星と木星
10月5日(土) 月齢6.7 金星と土星と木星
11月2日(土) 月齢5.3 金星と土星
最新の日程は下記リンク先をご覧ください。
http://scopetown.jp/kanbokai.html



おわりに
メールマガジンご意見などございましたら、下記のメールアドレス宛に感想など頂けると幸いです。

webmaster@scopetown.jp

よろしくお願い申し上げます!

2019年6月30日   
スコープテック 大沼 崇


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さまざまな天文現象のお知らせや解説。自身で撮影した天体写真などや、おすすめの本など紹介しています。星空情報メールでは案内しないマニアックな天文現象も紹介しています!

・乙女高原星空観望会
http://otome.sblo.jp/
山梨市牧丘町柳平で毎年10回開催している星空観望会のご案内です。天の川の見える最高の環境と豊かな自然に恵まれた場所でくつろぎながらみんなで星を見ませんか?望遠鏡を持たない初心者の方もたくさん参加しています!2019年の日程は上記サイト上でご案内しています。
・田奈星空観望会
また弊社の近くの田奈でも毎月一回観望会が行われています。どなたでも参加できます。こちらも初心者大歓迎です。望遠鏡を持っていない方もお気軽にどうぞ。
毎回30人以上の方が参加されています。2019年の日程は下記リンク先でご確認ください。
http://scopetown.jp/kanbokai.html
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スコープテックとラプトル50のひみつ


スコープテック(旧社名スターライト・コーポレーション)が株式会社として登記されたのは、2006年7月20日。7月20日といえば、人類が初めて地球以外の天体に着陸した記念日である。もちろん、良質な天体望遠鏡を初心者に販売する会社として設立することもあり、その歴史的記念日に設立するというのは前々から計画あっての話だったりします。(実際は登記は2006年ですが、個人事業として、株式会社星の手帖社の軒先を借り商売を始めたのは2004年のことです。)
ラプトル50イラスト


 入門者用の望遠鏡は、当時も今も弊社の製品を除くとまともなものはとても少ないのが現状です。当時はほとんど無名であった弊社でしたが、今や10余年に渡る努力によって『スコープテック』は、国産の天体望遠鏡としては、日本一の生産販売数を記録するブランドとなりました。それも支持を頂いたユーザーの皆様のおかげで、感謝してもしきれない程です。

 望遠鏡の品質の向上に努めたのは、もちろんですが、同じ位力を注いできたのは、購入後のアフターサポートです。。フリーダイヤルを用意し、望遠鏡の使い方だけでなく、こどもたちを含む、初心者の素朴な疑問や、観測の相談にも丁寧に答えてきました。さらに乙女高原星空観望会や乙女高原星空観望会といった誰でも参加できる観望会を年に20回以上行っています。。各地の町おこし的な観望会にも手弁当で協力してきた。なぜここまでするのか。もちろん広報的な側面もありますが、一番は、一般の人に少しでも宇宙や夜空に興味を持って欲しいからという気持ちがとても大きい部分を占めています。

 弊社、スコープテックで最初に作ったのがアトラス80(旧名SD-80AL)でした。口径8センチの中学生以上向けの入門機でした。すべての要素を設計し、一から金型を起こし、このクラスの望遠鏡を作ろうとすると1000万円単位のお金が掛かってしまう。スタートしたばかりの小さな会社じゃとても無理なことです。でも品質の高い望遠鏡は作りたい。私たちはどうしたのか…。既存の金型を持つOEMメーカーを当たりました。そこで見つけたのがアトラス80の元になる数々の既存部品の金型でした。要素を組み合わせ、一台の望遠鏡をレゴブロックにより組み上げて行く。それを最終的な製品とするというs架台の構造に根本的な欠陥があり、上下に何回か動かすと架台がグラグラになってしまい、使い物にならない。そこを直すことから始まりました。レンズの精度は、日本製という事もあり抜群でした。しかし内面のつや消しは極めて不十分。月を見ると視野全体のコントラストが低下し、鮮烈な見え味とは言えなかった。対物レンズの精度が生かされていないのだ。さらにバッフルの位置が不適切で、80mmの口径が絞られてしまっている。既存のメーカーは、こんな商品を何十年も売っていたのかと呆れつつ、そうしたネガをひとつひとつ消していった。完成品検査も厳格な基準を新たに設けた。

 工場はとても優秀で、工員や職人の能力も申し分ない。しかし各メーカーの最安値の入門用望遠鏡を作る事が主要な仕事だったOEM工場。利益を出す事が求められる入門機。厳しいコスト的制約がある。20年以上の生産の中で、抱えた問題は解決される事なく、メーカー側で改良されることも無く、ただ言われた通りに安く生産する事を強いられてきたのである。

僕らのアプローチは違いました。第一義的に『よく見えて使いやすい入門機を作る』なにより中身を重視。ネットによる直販が主体なので、販売価格に対して原価率が上がっても一般流通ルートに載せなければならない既存メーカーよりコストをかける事ができるのです。初めて望遠鏡を手にするユーザーが使いやすく、天体がシャープにくっきり見え感動してもらわないとダメなのです。
 
 特に望遠鏡の鏡筒内部のつや消し塗装は、きちんとやるにはとても手がかかります。一方向からつや消し塗装を吹いても、遮光環の影に塗料は届かない。遮光環を全部取り付けてからでは、塗料が回らない。何度も何度も塗料を内面に吹き付けないと鏡筒内での乱反射は防げないのです。

 鏡筒のパイプの末端処理は、光軸に影響します。ここも仕上げを丁寧に行ってもらうようにしました。そうしたポイントを全てちゃんとやってもらうようにすると、同じ望遠鏡を作っても、弊社が作る8センチ屈折経緯台と、同じ工場で作られてきた8センチ屈折経緯台は、姿形は似ているが、工場出荷額は、かなりの違いが出てきてしまいます。見え味に関係ない外見はコストアップを避けるために、徹底的にコストダウン。望遠鏡を入れる箱も、既存メーカーは写真入りのカラフルな箱に入れる。うちのアトラス80は、ダンボールでいい。虚飾を廃し、実性能を重視する。これを徹底して出来上がったのがアトラス80なのです。外装、外箱でコストダウンを測っても焼け石に水。弊社への納入価格はベース機種に対してかなり上がってしまいました。

 アトラス80は、弊社の入門機用ラインナップの最上位機種。架台の強度が理想には少し足りないが、上下軸、水平軸に全周微動装置を使用した全部盛りの入門機といえます。月も土星も木星もとても良くみえる。アトラス80で見る月は圧巻だ。内部のつや消し処理とバッフル(遮光環)の位置を最適化し、組立精度を向上させた結果。黒い夜空に、ぽっかりと漆黒の宇宙に浮かぶ臨場感たっぷりの月の姿が見える。アクロマートレンズですが、工場で高精度で磨かれたレンズは、外国製の入門機とは一桁高い精度で仕上げられているため、別売りの接眼レンズで200倍程度で木星や土星を観察すると、中国製のEDアポクロマートよりもよっぽどシャープに見えるのも作った側としては、とても痛快でした。
望遠鏡の選び方のポイント

 次に作ったのは、ラプトル50です。弊社のラインナップで一番安価な望遠鏡。でも僕が既存のラインアップで、最も愛着があるのがラプトル50だったりします。ラプトル50は、コストがかけられるアトラス80と違い、こどもたちが、お小遣いを貯めたり、お年玉を貯めたりして買う望遠鏡という位置付けなので、とにかく安く作らなきゃいけない。見え味を落とさず、シンプルに徹し、徹底的に無駄を廃し、コストダウンする。配送料金だって出来るだけ安くしなきゃいけない。でも見え味と架台三脚の強度は確保し、滑らかに動く架台に仕上げなきゃいけない。アトラス80以上に、大変な作業と思考が要求されました。

 まず望遠鏡の筒の部分の外装塗装は省きました。パイプを引き抜いたときの引き傷があり、外観が見すぼらしいとの意見もありましたが、素材のプラスチック自体が白いし、素材の色を活かせばいいじゃない!コストダウンも出来るし、外装の塗装を省いても見え味は低下しません。重要なのは絶対外せない部分。見え味を向上させる部分に省いたコストを投入することです。他の会社の入門機ではいい加減な内面の艶消し塗装や遮光環は、絶対に省けないポイントです。
 天体望遠鏡は、倍率が高く視野が狭いため照準用のちいさな望遠鏡が脇についています。他社の入門機にももちろんついていますが、望遠鏡自体にコストを掛けられないため、像がぼやけてしまい狙いをつけるのも困難なひどい品質のものばかり、ファインダーを支持し角度を調整する取り付け部も酷い品質でした。ちゃんと使えるまともなファインダーを付けようとすると、その部分だけで3000円以上になります。こどもたちのために販売価格は上げたくない。他社のように形だけで機能しない使えないファインダーは付けたくない。色々と考え悩んだ末に、光学式のファインダー自体やめてしまおうという決定をしました。調整しないと使えないし、ちゃんと調整できるものを付けても、ファインダーの調整は入門者にとって、慣れないうちはとても調整が難しく望遠鏡を使わなくなる大きな原因の1つだったのです。まさにこども用の望遠鏡にとっては、諸悪の根源以外のなにものでもないと考えました。だったら光学式ファインダーなんてやめちまえ!代わりに作り出したのが、覗き穴式ファインダーです。後ろから覗いて、おもちゃの銃のように狙いをつければ、見たい天体が視野に入ってくる便利な仕組みです。そしてコストは大幅に下げられる。何しろ穴の空いたちいさな金属板二枚だけ!ですからね。
面倒な光軸調整の必要が無く、誰でも直感的に使える覗き穴式ファインダーは、結果的に大成功で、ラプトル50より先に発売されていたアトラス80にも、その後発売されるアトラス60やラプトル60といった入門機ばかりでなく、弊社が発売する上級者向け鏡筒などにもほとんど全てに採用される事になります。こどもたちに使いやすいものは、『全ての人にとって使いやすい!』の好例という事になります。

 ラプトル50は、最初にデビューした時には、今のスチールパイプ三脚では無く、木製の三脚でした。他の望遠鏡のために作られ、工場で20年以上眠っていた木の三脚でした。数百セットがあり、使い道が無かったため、工場側は産業廃棄物として近く廃棄予定でした。これを利用する事でラプトル50は、スチールパイプ三脚を採用する予定だった時は7980円で発売予定だったのですが、1000円も安く発売開始する事ができました。工場側からの話では、この木製三脚は売り切りで数百セットあるが、使い切ってしまえばもう再生産はできないし、もし再生産したとしてもスチールパイプより高額になってしまうとのことでしたが、思わぬ事で予定より1000円も安く販売することが出来たのです。

 その後ラプトル50は、こどもや入門者用の望遠鏡として、もっとも使いやすく良く見える望遠鏡という事で、世界天文年の際に公的機関から受賞したり、多くのベテラン天文ファンや、科学館やプラネタリウムの学芸員や解説者の先生に支持された事もあり、5万台以上のラプトル50が弊社を旅立ち、多くのこどもたちや入門者の元へ届きました。

 ラプトル50は弊社のラインナップで一番エントリーに位置する小さな望遠鏡ではありますが、『スコープテック』のブランドアイコンそのものであり、スコープテックのスピリットでもあり、弊社のフラッグシップなのです。私、大沼が一番愛してやまない望遠鏡が『ラプトル50』なのです。

追記 スコープテックがブランドとしてここまで来られたのには、お客さまのご支持が一番大きいです。他にも弊社社員のがんばりはもちろん大きいのですが、外部の支えもとても大きかったと感じています。創業期から今までは、阿部編集長率いる星の手帖社のみなさん。ミザールテックの伊藤部長、様々な助言をくださったビクセン光学の齋藤彰社長、スタークラウドの宮野さんなど沢山の皆さんの様々な助言や支援があっての事です。この辺りも皆さんにとって興味深い内容だと思います。いずれご紹介できたらと考えています。

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