誰からも愛されキャラの望遠鏡 ラプトル50とラプトル60

誰からも愛されキャラの望遠鏡 ラプトル50とラプトル60

弊社のベストセラー商品である
ラプトル50が発売されたのが2007年9月5日
ラプトル60が発売されたのが2010年7月3日

ラプトル50は発売開始からもう12年
ラプトル60も発売開始から9年


両方合わせると数万台を販売した文字通りのベストセラー天体望遠鏡です。低価格品は、外国製品が幅を利かせる中で、全てのパーツを日本で生産し組み立てする製品が、アマゾンでの販売で独走し、ここまで長きに渡って売れているのは、珍しい事ではないでしょうか。

ラプトル50
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ラプトル60
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低価格帯の望遠鏡の中で、圧倒的な性能と使いやすさ、手抜きの無い光学機器として基本を全て押さえた作り。はじめて天体望遠鏡を使う子どもたちが、何を必要として、なにを必要としないか。どうやったら使いやすくなるかを徹底的に追求した結果がベストセラー製品となったポイントであると私は考えています。ラプトル50とラプトル60は、初めて望遠鏡を使うこどもたちが、こどもたちだけで、出来るだけ簡単に、自分たちだけの力で月や土星や木星(操作になれてくれば重星や星雲、星団も)視野に導入し、ピントを自分で合わせて、星空観察ができることを最優先に考えて作ったのがラプトル50やラプトル60という天体望遠鏡です。


こども用望遠鏡の条件をリストアップしてみます。

1.使用前にセットアップや調整の必要がない。

2.重量はできるだけ軽く

3.装備はシンプルに

4.振動は抑える(100倍程度で)

5.ガタやブレのない滑らかな動き

6.直感的な操作だけで使える単純な構造でこどもが理解できる単純な構造

7.良好な見え味

8.できるだけ安価に。理想的には1万円程度、高くても2万円まで


8つのポイントがあります。

しかしベテランの天文家から見ると、光学式ファインダーがないのはだめかもしれません。微動装置がないのも失格。そもそもそんな小口径で低倍率でははなんにも見えない。色々言われたこともあります。そうでしょうか?
それらの指摘は、大人にとっては、半分当たっているとも言えない事もないですが、半分が完全な的外れと言えます。はじめて望遠鏡を使うこどもにとっては100%的外れとも言えます。

光学式のファインダー(ちいなさ照準用の低倍率の望遠鏡)には大きな欠陥があります。観測まえに光軸合わせという調整作業が必要になります。光軸調整に慣れたベテランであれば、1分もあれば調整は終わりますが、光軸合わせは大人でも習熟に時間がかかります。最初は10分も20分も格闘する羽目になります。そして問題なのは、光学式ファインダーの光軸調整が出来なければ、視野の狭い望遠鏡本体の視界に見たい天体を入れる事も困難で、月のクレーターすら見ることができません。望遠鏡で星空観察するに当たって最も大きな挫折のポイントなのです。

○結論 調整の必要がなく、だれでも直感的に使える覗き穴ファインダーがこどもにとって一番使いやすい。

微動装置の装備。まともな微動装置があると望遠鏡が重くなります。反面、望遠鏡の台に多少のガタや緩みがあっても、ごまかしが効くという製造側の言い訳のメリットがありますが、小学校低学年のはじめて望遠鏡を使うこどもにとっては、望遠鏡全体が重くなってしまうデメリットと、一部の片持ちフォーク式マウントを除き、微動装置を動かす前に、上下軸、水平軸のクランプの操作が必要になり、操作の煩雑性が増すというデメリットがあります。大人目線で見ると、微動装置の装備は、メリットもありますが、デメリットも多いのです。

○結論 微動装置を装備しない代わりに、ブレやガタのない滑らかに動くフリストップマウントが軽量化、低価格化、直感的な操作を低価格で実現する現時点での一番の方法である。


『閑話休題』
滑らかな動きでガタがないフリーストップで微動装置を装備した片持ちフォーク式経緯台は、そういう意味ではどんな初心者にとっても理想的な架台であるのは、100パーセント同意できます。良質な望遠鏡や付属品を含めたフルセットで、2万円を切る販売価格を実現できればという前提条件が付きますが。NEXTジェネレーションラプトル望遠鏡で実現したいものです!

3.装備はシンプルに

バローレンズや延長筒など、使い方が難しくなる付属品を必要としない設計とする。天頂プリズムを付けると、延長筒を外さないとピントが出ない望遠鏡はダメ。天頂プリズムや天頂ミラーを使用する時でも、使用しない時でも、ドローチューブのストロークを長くして延長筒の取り付けや取り外しはなしに、ピントが合うようにしないとダメです。
大人でも当たり前のことでも、こどもでは理解が難しいこともあるのです。
また良くある天頂プリズムや天頂ミラーを付けないとピントが合わない望遠鏡ももちろんダメです。

4.振動は抑える(100倍程度で)5.ガタやブレのない滑らかな動き

振動を抑えるのは重要です。架台の強度を増せば増しただけ振動を抑えられる。しかし架台の強度を増そうとすると、重量もコストもどんどんと上がって行きます。販売価格や重量を抑えなければならないこども用の望遠鏡では、どこかで諦めなければなりません。
そこで、ラプトル50やラプトル60を開発するにあたり、『100倍程度』で観察した時に、快適に使える、観察に支障のない強度を備える事を目標としました。『ガタやブレのない滑らかな動き』に関しても100倍程度で快適に使える、支障なく使える事を目標にしました。

6.直感的な操作だけで使える単純な構造でこどもが理解できる単純な構造

手を添えて望遠鏡を見たい天体の方向へ向けて、覗き穴ファインダーで狙いを付けると、望遠鏡の視界に見たい天体が導入できている。これだけの単純明快な操作だけで天体望遠鏡が使える。そういう望遠鏡がなかなかラプトル50やラプトル60以外にないのが現状です。単純な構造のおもちゃ並みに操作が楽でないと、こどもは飽きてしまうのです。

7.良好な見え味

良好な見え味を実現するには、どうすれば良いのでしょうか。
いくつかのポイントがあります。

・高精度な光学系
高精度な日本製のレンズが必須です。
・正確な組み立て
組み立て時にレンズの配置や、部材ひとつひとつが正確に作られていなければ、組み立てた時に光軸がずれてしまいます。どんなに高精度なレンズでも、組み立てても出来るのは、よく見えない望遠鏡になってしまうのです。
・徹底的な内面のつや消し、遮光環の正確な配置
望遠鏡の筒の内側は、外からはなかなか見えません。それだけに入門用望遠鏡では手抜きされたものも多いのです。ラプトル50やラプトル60は、良好な見え味を実現するために、『高精度な光学系』と『正確な組み立て』にとても多くのコストを割いています。価格の安いラプトル50に関しては、望遠鏡の外装の塗装を全て諦めなければならないほどでした。その証拠に、三脚は塗装より安い金属メッキ。望遠鏡の筒は無塗装だったりします。塗装を塗った方が高級感がでますが、それで価格が上がったり、内面のつや消し塗装を省いたのでは、本末転倒であると考えたのです。実際ちまたで売られているこども用望遠鏡の多くが、外装はメタリック塗装で見栄えだけは良くしているのですが、外観からはわからない内面のつや消し塗装や遮光環を省いてしまったものがとても多いのも事実です。内面のつや消し塗装や遮光環を省くとどうなるか。月を見ても、明るい惑星を見ても、視界のコントラストが上がらず、白浮きしてしまい、クリアなすっきりした見え味にならず、せっかくの感動が薄れてしまうのです。

ラプトル50やラプトル60を売り始めて、以外だった事があります。それは、大人の入門者にも人気になった事。女性に人気の望遠になった事、そして何より、天体観測を何十年も楽しんでいるベテランの皆さんが自ら普段使いの望遠鏡として購入頂いていることです。
こどもにとって使いやすい望遠鏡というのは、大人やベテランにとっても使いやすいということだったのです。

ベテランの皆さんは、大きな天体望遠鏡を持ちそれを使いこなされている方も多いのですが、普段仕事をされている平日に、寝る前にちょっとだけ星が見たいなと考えたとしても、大きな望遠鏡は、見る前にセットアップするのにも時間がかかります。数十キロも重量がある望遠鏡を、外に出す労力は大変なものです。もう少し小型で軽量な望遠鏡でも、重さが五キロも十キロもある大人用の入門機でも、平日の夜のわずかな時間、夜空に見えている月や惑星を見るのに、それをベランダや庭に出すのは結構大変です。
ラプトル50は、重さが1.5kg、ラプトル60でも2.5kgしかありません。玄関の隅や部屋の隅に普段は置いておき、使いたい時にパッと持ち出し、軒先に持ち出して、5分か10分だけちょっとだけ見てすぐに撤収するデイリーユースの望遠鏡として、こどもたちだけでなく、この道何十年のベテラン勢にも愛されている望遠鏡。それがラプトル50とラプトル60という天体望遠鏡なのです。

国立天文台の副台長の渡部潤一先生は、世界最大級の望遠鏡であるすばる望遠鏡(口径8.2m)で太陽系内の小天体の研究をしているような先生ですが、ラプトル50の熱烈なファンで、枕元にラプトル50を置いているそうです。そして見たい時に軒先にラプトル50を持ち出して様々な天体を楽しんでいるとお聞きしました。

また星に関わる民俗や伝承の研究者の北尾浩一先生は、ラプトル60を普段使いの望遠鏡として使って頂いていて2019年12月5日放送のNHKの宇宙番組『コズミックフロントNEXT』で、愛機のラプトル60が登場します。みなさんもぜひ番組をご覧になってくださいね。

コズミック フロント☆NEXT選「占星術に魅せられて~星座をめぐる物語~」
https://www4.nhk.or.jp/cosmic/x/2019-12-05/10/17768/2120245/

NHKのBSプレミアム コズミック フロント☆NEXT
12月5日22時から23時です。北尾先生とラプトル60が登場するのは、22時40分すぎくらいからとのことです。 


朝日新聞のインタビューでも、北尾先生の背景にラプトル60が写っています。
https://book.asahi.com/article/11714982

ラプトル50とラプトル60がどのような経緯で作られ、どんなコンセプトで作られたのかを今回改めてブログ記事にさせていただきました。楽しんで頂けたら幸いです。さらにベテランの天文ファンの多くに指示され、初心者用の望遠鏡として、弊社製品を長年に渡り推薦頂けていることに心より感謝しております。

今後ともスコープテックをよろしくお願い申し上げます!


2019年11月29日
株式会社 スコープテック 
大沼 崇
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ZEROの製品開発 その1

ZEROの製品開発 その1
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片持ちフォーク式の経緯台が、一般に対して多く普及するようになったキッカケは、ポルタ経緯台の発売がきっかけです。標準的なアリガタアリミゾでの鏡筒との接続を採用し、その使いやすさと汎用性から多くのユーザーに愛用されています。以後様々なメーカーから、フォローオンプロダクツが発売されました。そういう意味で、弊社の新型架台『ZERO』も、ポルタに追従する製品と言えます。

●後発製品として求められること
後発製品として、製品を発売する場合。先発品と同じようなものを作ってもほとんどインパクトはありません。架台の場合は、積載重量、コストパーフォーマンス、使いやすさ、汎用性、振動減衰の速さ、デザインなど様々な性能や要素で、先発品を上回らなければなりません(全て上回るのが理想ではありますが、それはなかなか出来ない相談ですね。)

先発品を超える手法として、禁じ手ですが、デッドコピーというお隣の国が使う手法があります。同じような性能のものを、圧倒的に安い金額で市場に出すのです。開発費もほとんどかかりませんし、安い労働力にものをいわせて、圧倒的に安い金額で市場に製品を供給することが可能です。もともとの製品はかわいそうなことに、市場から追い出されてしまう事があります。

例示すると天文業界で有名な例は、GP赤道儀だったりします。今だにGP赤道儀のクローンの系譜は、セレストロンやシンタをはじめとする中国に関係のあるメーカーの赤道儀にその名残を見ることができます。片やオリジナルのGP赤道儀は、無くなってしまったわけですから、その影響は甚大です。

じゃあ、スコープテックはどうするのか。ということなんです。ポルタのデッドコピーみたいなのを、より安い工場で作る。これならほとんど開発費をかけずに、めっちゃ安い金額で市場にポルタもどきを供給することは可能です。ある程度、儲ける事もできます。リスクも少ない『濡れ手に粟商売』。

しかし、これでは色々言われてしまします。色々なところから。特許や意匠登録に引っかからなければ、OKなんでしょうか。いやいやスコープテックとしては、プライドがありますからそんな事はしたくもないし、最初からそんなことは一切考えませんでした。


●片持ちフォーク式経緯台のメリット
・鏡筒前後バランスを取ると、シーソー型経緯台のように、望遠鏡の仰角の変化により前後バランスが崩れない。>>フリーストップの実現。

●片持ちフォーク式経緯台の弱点
・シーソー型経緯台に比べると、アームがかさばる。持ち運び時に甚だ邪魔である。
・アームの強度不足により、固有振動数が低くなりやすい。>アームを無くした改良品の存在
・重量物である望遠鏡本体を1つのアームで支えるため、アームの剛性が不足すると振動が多い架台になってしまう。
・アームの角度を調整できるようにしたいが、そこが強度的な弱点となる場合が多い。
・軸の強度を上げようとすると、軸が大径化し、重量がかさんでくる。

●軸の重要性
高度軸には、軸に対して垂直方向に力が掛かるため、重量のある鏡筒を搭載した場合に、その部分が弱点となる。また水平軸には軸方向(垂直方向)に力が掛かるが、搭載鏡筒の大きさによっては、水平方向のバランスを取ることが出来ないのでやはり軸に対して軸の左右で非対称の力が加わることになる。
必要な強度に応じて、水平軸と高度軸の設計を別にすることも考えられるが、それはコストアップに繋がってしまう。


●需要の調査。
8から10センチクラスのアポクロマート鏡筒を持っていて、普段は赤道儀に載せて撮影などに使っているユーザーも、時には、経緯台に載せて気軽に星を見たいという需要がある。しかし、既存の片持ちフォーク式の経緯台は、強度的が足らず、10センチのアポクロマート鏡筒を搭載するには厳しいものが多い、まず振動の問題がある。低倍率での観察であれば我慢ができるが、ちょっと惑星を高倍率で見たいという時は、口径8センチの鏡筒でも、振動の影響を大きく受けてしまう。振動でピント合わせにも一苦労。さらにフリーストップとは言っても、動きは渋めで気持ち良いフリーストップが実現できていない。T型の強度のフリーストップマウントを購入してみたものの、大きめの鏡筒を載せても十分な強度があるのは良いが、構造上重たい鏡筒を載せると反対側にバランスウェイトを付けることになる。そうするとウィエイトも含めた赤道儀と重量はさほど変わらなくなってしまう。ユーザー側にそんな悩みがあることがわかってきた。

●市場で求められる架台のアウトライン
T型のマウントのように、滑らかに動くフリーストップマウントで、なおかつ高倍率で使う時にやはり便利な微動装置付きの、軽量で振動の少ない頑丈な片持ちフォークマウントを作れば売れるかもしれない!ということが分かってきた。
それに加えて、アームの角度が可変で調整できて、なおかつ軽量で折りたたみできる機能があればいう事ないなと考えた訳です。

●求められる架台の要素のリストアップ

☆架台の仕様として必要な項目
・極めて滑らかでピタリと止まるフリーストップ
・バックラッシュの少ない正確な動きの微動装置
・振動の収まりが早い高剛性なフォークアーム
・フォークアームの振出角度が調整できる
・軽量
・工具なしで分解できてコンパクトになる

☆機能的に求められるもの
・様々な他社製三脚に取り付けできる
・さまざまな他社製鏡筒バンドやアリミゾ、アルカスイスなども取り付けられる。
・今後の発展性を見込んでいる

リストアップは簡単ですが、相反する事が要求されていて実現は簡単ではない事が分かるでしょう。

思えば、ポルタ登場から10年以上が経過しても、片持ちフォーク式の経緯台でそんな製品がないというと、それは作るのがとても難しいことが理由であった。より強度があるものを目指した製品はあるが、なかなか実現できていないのが現状だったようです。

●軸の強度とアームの剛性の確保がポイント
片持ちフォークの水平軸と高度軸を比べた場合、軸に対してねじり方向に大きな力が掛かる高度軸の方がより強度を要することがわかる。

そこで、最初の設計の段階で、高度軸の必要な強度を考え、軸を設計し、それを両軸に利用することとした。軸の構造には秘密があります。架台のフリーストップのテンション調整を、一般的には軸の横からネジで押すタイプのものが多いのですが、他社と同じ軸の構造では、基本的に軸を大型化するしか強度を上げるしかありません。大径化は大幅な重量増をもたらします。

反対側から軸全体を引っ張る構造にする事で、ガタや緩みをとり、軸の内部で接触面積をふやし、小さい軸でもガタが出ない構造にしました。
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軽量化を目指した軸の小径化は、別の問題も産み出しました。ウォームホイルを小径化するしかないのです。ウォームホイルの小径化は、微動軸のフィーリング悪化を招きます。これには随分悩まされましたが、ウォームケースの高精度化、ウォームの大径化、ギアー系(ウォームホイルとウォーム)の高精度化など、様々なポイントで設計と加工精度を見直し、1つ1つ解決していきました。どこでヒントを得たかというと、それは、かつて素晴らしい望遠鏡を多数送り出した、日本精光研究所(ユニトロン)の6センチ赤道儀です。ウォームホイルは平ギアに近いコストのかからない小径ウォームホイルを採用していましたが、ウォームの直径を大きくすることにより、素晴らしく滑らかな微動の感触を得ていたのです。

●片持ちのフォークアーム
片持ちフォークアームの剛性は、軸の強度とともに架台全体の振動にとても大きな影響を与えます。軸がいくら頑丈でも、アームの剛性が低いと振動は収まりません。
当初の設計でもそれなりの強度は出ましたが、試作を作ってみて実際に鏡筒を載せてみると、既存の製品より優れた振動減衰が出来ていましたが、ユーザーの皆さんが要求する高い目標値にたいしては、まだアームの剛性が足りず随分苦労しました。細かい話は以後に譲りますが、まずは当初の微動軸の位置が問題でした。アーム外側に設置することにより、アームの厚み一杯にリブの高さを上げることができるようになりました。外観上は、微動軸の位置を内側にした方がアーム先端の形状が丸くなりスマートなのですが、内側にすると、ウォームホイルとウォームのクリアランスを調整するイモネジを内側に設置するしかなくなる、ツールのアクセスの関係で補強リブの高さに制限が出てしまうのです。
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剛性を考えると外側にした方が断然有利ということになり設計を変更しました。数度の設計変更をしながら、試作を繰り返し、最新のエンジニアリングを取り入れ、さらにアーム内のリブを含めた構造自体を、最新のCADシステムで解析し、応力が集中する部分がないように再設計を行いました。
その間に重量はほとんど変わらずに、数倍の剛性アップを果たしたのです。

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続く

星空や宇宙を見る道具を作るということ

望遠鏡とは

 望遠鏡や顕微鏡は、それまで肉眼の視力の範囲内で周りの世界を認識するしか無かった人類に、肉眼の能力の限界を超えた視界を提供した素晴らしいツールです。望遠鏡は、好奇心旺盛なガリレオ・ガリレイのような天文学者の手に渡り、空に見える天体をそれまでにない解像力と集光力で観測することが出来るようになり、月のクレーターや、木星の衛星の動き、天の川の正体を見せ、望遠鏡による天体観測の進展は、やがて人類に『宇宙』という新たなフロンティアの存在を確信させました。望遠鏡や顕微鏡の発明は、まさに視力の限界を超えて、これまで人類が認識できなかった世界への扉を開いたのです。望遠鏡や顕微鏡の発明が無かったら、今のような科学や技術、宇宙探査の進展は無かったと言い切ってしまっても言い過ぎではないでしょう。
こどもラプトル50

 私は、『初めて宇宙や星空や天体に興味を持ったこども達や初心者に、人類で初めて望遠鏡を向けたガリレオが感じた感動の追体験をして欲しい』と考えています。
視野がぼやけたり、霞んだり、視界がブレてしまうような、いい加減な作りの望遠鏡が市場の大勢を占める中で、「使いやすく、出来るだけ安価で、しかもくっきりはっきり見える望遠鏡を作り市場に供給すること」が、会社としてミッションです。
さらに私たちは、購入後のアウターサポートにとても力を入れています。僕らは、ストイックに一途に自分たちの製品の見え味と使いやすさを磨き上げるだけでなく、購入後に親身のサポートをし、星空を一生の趣味の1つとして楽しんでくれる人を増やしていきたいと考えています。
観望会シーン

これからの望遠鏡の役割
 50年前の今日、アポロ計画により、1969年7月20日に人類は初めて月面に到達しその表面を歩きました。アポロ11号からアポロ17号まで、6度の月着陸を果たしましたが、それから約半世紀、再び人間が月面に立つ事はありませんでした。現代のロケットやそれを支えるコンピューターの性能は飛躍的に高まりましたが、月の探査はやっとここ10年で無人探査機が再び訪れるようになった程度でした。しかしながら、ここ数年で状況は大きく変化します。ついには中国による月の有人探査の計画が持ち上がりました。対する米国は、アルテミス計画という新たな有人月探査計画を発表し、2024年に再び人間を月面に送り込む計画を発表しました。民間ロケット会社や日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)や世界中の宇宙機関が月を目指します。2020年代後半から2030年代以降にかけて、月の周回軌道に、西側諸国とロシアの共同利用宇宙ステーションの建設も始まり、お茶の間の4Kテレビに月周回軌道からのライブ映像が見られるような時代がもうすぐそこまで来ているのです。
NASA_Apollo_17

 50年前のアポロ計画当時、世界中で天体望遠鏡が飛ぶように売れました。月面からの生中継や周回軌道からの極めて鮮明な月面映像や月面写真がお茶の間で見られるようになったにも関わらずです。地上から望遠鏡で月を見れば、とても鮮明に月面の様子が見られます。しかし月の軌道で写した映像や写真に敵わないのは自明の理。しかし途轍もない数の望遠鏡が日本から世界に輸出され、空前の天文ブームが起こり、多くの人が生の月面像を楽しんだのです。そしてその後、多くの数の天文ファンや天文学者、宇宙飛行士を世界中で産み出したのです。
これからの10年、20年は、単発的なアポロ計画のような月探査ではなく、月をゲートに太陽系全体へと有人宇宙開発が本格的に始まる『宇宙大航海時代』の第一歩になるのではないかと、私自身は想像しています。人類史の新たなる歴史の1ページの始まりとなるのではないか。そんな期待をしています。
レンズ研磨工場

 その中で地上から宇宙を見るこども達のための『よく見える天体望遠鏡』の役割は、ますます大きくなると考えています。望遠鏡を通してみる月面の様子や、土星や木星、その他の星達の輝きは、探査機や大望遠鏡に取り付けられらたカメラで撮影した映像とは違う、独特のライブ感と生の迫力に満ちています。自分で望遠鏡の向きを変え、視界に導き、ピントを合わせた時見えた天体の姿には誰しも感動するものです。そういう意味で、望遠鏡の役割はとても大きいと考えています。またその体験があって、そうした探査機や宇宙望遠鏡から送られてくる鮮明な画像をテレビやインターネットで見た際により観察力をもって楽しめると言えます。
『スコープテック』は、これからもこども達が初めて手にする望遠鏡を、ひとつひとつ大切に、本当によく見える天体望遠鏡を心を込めて作って行きたいと考えています。そんなこども達の中から、将来の日本人宇宙飛行士が誕生し、僕の叶える事が出来なかった夢である、「月面に立つ」という夢を叶える人が出てくることを願ってやみません。

望遠鏡組み立て1


 

スコープテックとラプトル50のひみつ


スコープテック(旧社名スターライト・コーポレーション)が株式会社として登記されたのは、2006年7月20日。7月20日といえば、人類が初めて地球以外の天体に着陸した記念日である。もちろん、良質な天体望遠鏡を初心者に販売する会社として設立することもあり、その歴史的記念日に設立するというのは前々から計画あっての話だったりします。(実際は登記は2006年ですが、個人事業として、株式会社星の手帖社の軒先を借り商売を始めたのは2004年のことです。)
ラプトル50イラスト


 入門者用の望遠鏡は、当時も今も弊社の製品を除くとまともなものはとても少ないのが現状です。当時はほとんど無名であった弊社でしたが、今や10余年に渡る努力によって『スコープテック』は、国産の天体望遠鏡としては、日本一の生産販売数を記録するブランドとなりました。それも支持を頂いたユーザーの皆様のおかげで、感謝してもしきれない程です。

 望遠鏡の品質の向上に努めたのは、もちろんですが、同じ位力を注いできたのは、購入後のアフターサポートです。。フリーダイヤルを用意し、望遠鏡の使い方だけでなく、こどもたちを含む、初心者の素朴な疑問や、観測の相談にも丁寧に答えてきました。さらに乙女高原星空観望会や乙女高原星空観望会といった誰でも参加できる観望会を年に20回以上行っています。。各地の町おこし的な観望会にも手弁当で協力してきた。なぜここまでするのか。もちろん広報的な側面もありますが、一番は、一般の人に少しでも宇宙や夜空に興味を持って欲しいからという気持ちがとても大きい部分を占めています。

 弊社、スコープテックで最初に作ったのがアトラス80(旧名SD-80AL)でした。口径8センチの中学生以上向けの入門機でした。すべての要素を設計し、一から金型を起こし、このクラスの望遠鏡を作ろうとすると1000万円単位のお金が掛かってしまう。スタートしたばかりの小さな会社じゃとても無理なことです。でも品質の高い望遠鏡は作りたい。私たちはどうしたのか…。既存の金型を持つOEMメーカーを当たりました。そこで見つけたのがアトラス80の元になる数々の既存部品の金型でした。要素を組み合わせ、一台の望遠鏡をレゴブロックにより組み上げて行く。それを最終的な製品とするというs架台の構造に根本的な欠陥があり、上下に何回か動かすと架台がグラグラになってしまい、使い物にならない。そこを直すことから始まりました。レンズの精度は、日本製という事もあり抜群でした。しかし内面のつや消しは極めて不十分。月を見ると視野全体のコントラストが低下し、鮮烈な見え味とは言えなかった。対物レンズの精度が生かされていないのだ。さらにバッフルの位置が不適切で、80mmの口径が絞られてしまっている。既存のメーカーは、こんな商品を何十年も売っていたのかと呆れつつ、そうしたネガをひとつひとつ消していった。完成品検査も厳格な基準を新たに設けた。

 工場はとても優秀で、工員や職人の能力も申し分ない。しかし各メーカーの最安値の入門用望遠鏡を作る事が主要な仕事だったOEM工場。利益を出す事が求められる入門機。厳しいコスト的制約がある。20年以上の生産の中で、抱えた問題は解決される事なく、メーカー側で改良されることも無く、ただ言われた通りに安く生産する事を強いられてきたのである。

僕らのアプローチは違いました。第一義的に『よく見えて使いやすい入門機を作る』なにより中身を重視。ネットによる直販が主体なので、販売価格に対して原価率が上がっても一般流通ルートに載せなければならない既存メーカーよりコストをかける事ができるのです。初めて望遠鏡を手にするユーザーが使いやすく、天体がシャープにくっきり見え感動してもらわないとダメなのです。
 
 特に望遠鏡の鏡筒内部のつや消し塗装は、きちんとやるにはとても手がかかります。一方向からつや消し塗装を吹いても、遮光環の影に塗料は届かない。遮光環を全部取り付けてからでは、塗料が回らない。何度も何度も塗料を内面に吹き付けないと鏡筒内での乱反射は防げないのです。

 鏡筒のパイプの末端処理は、光軸に影響します。ここも仕上げを丁寧に行ってもらうようにしました。そうしたポイントを全てちゃんとやってもらうようにすると、同じ望遠鏡を作っても、弊社が作る8センチ屈折経緯台と、同じ工場で作られてきた8センチ屈折経緯台は、姿形は似ているが、工場出荷額は、かなりの違いが出てきてしまいます。見え味に関係ない外見はコストアップを避けるために、徹底的にコストダウン。望遠鏡を入れる箱も、既存メーカーは写真入りのカラフルな箱に入れる。うちのアトラス80は、ダンボールでいい。虚飾を廃し、実性能を重視する。これを徹底して出来上がったのがアトラス80なのです。外装、外箱でコストダウンを測っても焼け石に水。弊社への納入価格はベース機種に対してかなり上がってしまいました。

 アトラス80は、弊社の入門機用ラインナップの最上位機種。架台の強度が理想には少し足りないが、上下軸、水平軸に全周微動装置を使用した全部盛りの入門機といえます。月も土星も木星もとても良くみえる。アトラス80で見る月は圧巻だ。内部のつや消し処理とバッフル(遮光環)の位置を最適化し、組立精度を向上させた結果。黒い夜空に、ぽっかりと漆黒の宇宙に浮かぶ臨場感たっぷりの月の姿が見える。アクロマートレンズですが、工場で高精度で磨かれたレンズは、外国製の入門機とは一桁高い精度で仕上げられているため、別売りの接眼レンズで200倍程度で木星や土星を観察すると、中国製のEDアポクロマートよりもよっぽどシャープに見えるのも作った側としては、とても痛快でした。
望遠鏡の選び方のポイント

 次に作ったのは、ラプトル50です。弊社のラインナップで一番安価な望遠鏡。でも僕が既存のラインアップで、最も愛着があるのがラプトル50だったりします。ラプトル50は、コストがかけられるアトラス80と違い、こどもたちが、お小遣いを貯めたり、お年玉を貯めたりして買う望遠鏡という位置付けなので、とにかく安く作らなきゃいけない。見え味を落とさず、シンプルに徹し、徹底的に無駄を廃し、コストダウンする。配送料金だって出来るだけ安くしなきゃいけない。でも見え味と架台三脚の強度は確保し、滑らかに動く架台に仕上げなきゃいけない。アトラス80以上に、大変な作業と思考が要求されました。

 まず望遠鏡の筒の部分の外装塗装は省きました。パイプを引き抜いたときの引き傷があり、外観が見すぼらしいとの意見もありましたが、素材のプラスチック自体が白いし、素材の色を活かせばいいじゃない!コストダウンも出来るし、外装の塗装を省いても見え味は低下しません。重要なのは絶対外せない部分。見え味を向上させる部分に省いたコストを投入することです。他の会社の入門機ではいい加減な内面の艶消し塗装や遮光環は、絶対に省けないポイントです。
 天体望遠鏡は、倍率が高く視野が狭いため照準用のちいさな望遠鏡が脇についています。他社の入門機にももちろんついていますが、望遠鏡自体にコストを掛けられないため、像がぼやけてしまい狙いをつけるのも困難なひどい品質のものばかり、ファインダーを支持し角度を調整する取り付け部も酷い品質でした。ちゃんと使えるまともなファインダーを付けようとすると、その部分だけで3000円以上になります。こどもたちのために販売価格は上げたくない。他社のように形だけで機能しない使えないファインダーは付けたくない。色々と考え悩んだ末に、光学式のファインダー自体やめてしまおうという決定をしました。調整しないと使えないし、ちゃんと調整できるものを付けても、ファインダーの調整は入門者にとって、慣れないうちはとても調整が難しく望遠鏡を使わなくなる大きな原因の1つだったのです。まさにこども用の望遠鏡にとっては、諸悪の根源以外のなにものでもないと考えました。だったら光学式ファインダーなんてやめちまえ!代わりに作り出したのが、覗き穴式ファインダーです。後ろから覗いて、おもちゃの銃のように狙いをつければ、見たい天体が視野に入ってくる便利な仕組みです。そしてコストは大幅に下げられる。何しろ穴の空いたちいさな金属板二枚だけ!ですからね。
面倒な光軸調整の必要が無く、誰でも直感的に使える覗き穴式ファインダーは、結果的に大成功で、ラプトル50より先に発売されていたアトラス80にも、その後発売されるアトラス60やラプトル60といった入門機ばかりでなく、弊社が発売する上級者向け鏡筒などにもほとんど全てに採用される事になります。こどもたちに使いやすいものは、『全ての人にとって使いやすい!』の好例という事になります。

 ラプトル50は、最初にデビューした時には、今のスチールパイプ三脚では無く、木製の三脚でした。他の望遠鏡のために作られ、工場で20年以上眠っていた木の三脚でした。数百セットがあり、使い道が無かったため、工場側は産業廃棄物として近く廃棄予定でした。これを利用する事でラプトル50は、スチールパイプ三脚を採用する予定だった時は7980円で発売予定だったのですが、1000円も安く発売開始する事ができました。工場側からの話では、この木製三脚は売り切りで数百セットあるが、使い切ってしまえばもう再生産はできないし、もし再生産したとしてもスチールパイプより高額になってしまうとのことでしたが、思わぬ事で予定より1000円も安く販売することが出来たのです。

 その後ラプトル50は、こどもや入門者用の望遠鏡として、もっとも使いやすく良く見える望遠鏡という事で、世界天文年の際に公的機関から受賞したり、多くのベテラン天文ファンや、科学館やプラネタリウムの学芸員や解説者の先生に支持された事もあり、5万台以上のラプトル50が弊社を旅立ち、多くのこどもたちや入門者の元へ届きました。

 ラプトル50は弊社のラインナップで一番エントリーに位置する小さな望遠鏡ではありますが、『スコープテック』のブランドアイコンそのものであり、スコープテックのスピリットでもあり、弊社のフラッグシップなのです。私、大沼が一番愛してやまない望遠鏡が『ラプトル50』なのです。

追記 スコープテックがブランドとしてここまで来られたのには、お客さまのご支持が一番大きいです。他にも弊社社員のがんばりはもちろん大きいのですが、外部の支えもとても大きかったと感じています。創業期から今までは、阿部編集長率いる星の手帖社のみなさん。ミザールテックの伊藤部長、様々な助言をくださったビクセン光学の齋藤彰社長、スタークラウドの宮野さんなど沢山の皆さんの様々な助言や支援があっての事です。この辺りも皆さんにとって興味深い内容だと思います。いずれご紹介できたらと考えています。

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