星空や宇宙を見る道具を作るということ

望遠鏡とは

 望遠鏡や顕微鏡は、それまで肉眼の視力の範囲内で周りの世界を認識するしか無かった人類に、肉眼の能力の限界を超えた視界を提供した素晴らしいツールです。望遠鏡は、好奇心旺盛なガリレオ・ガリレイのような天文学者の手に渡り、空に見える天体をそれまでにない解像力と集光力で観測することが出来るようになり、月のクレーターや、木星の衛星の動き、天の川の正体を見せ、望遠鏡による天体観測の進展は、やがて人類に『宇宙』という新たなフロンティアの存在を確信させました。望遠鏡や顕微鏡の発明は、まさに視力の限界を超えて、これまで人類が認識できなかった世界への扉を開いたのです。望遠鏡や顕微鏡の発明が無かったら、今のような科学や技術、宇宙探査の進展は無かったと言い切ってしまっても言い過ぎではないでしょう。
こどもラプトル50

 私は、『初めて宇宙や星空や天体に興味を持ったこども達や初心者に、人類で初めて望遠鏡を向けたガリレオが感じた感動の追体験をして欲しい』と考えています。
視野がぼやけたり、霞んだり、視界がブレてしまうような、いい加減な作りの望遠鏡が市場の大勢を占める中で、「使いやすく、出来るだけ安価で、しかもくっきりはっきり見える望遠鏡を作り市場に供給すること」が、会社としてミッションです。
さらに私たちは、購入後のアウターサポートにとても力を入れています。僕らは、ストイックに一途に自分たちの製品の見え味と使いやすさを磨き上げるだけでなく、購入後に親身のサポートをし、星空を一生の趣味の1つとして楽しんでくれる人を増やしていきたいと考えています。
観望会シーン

これからの望遠鏡の役割
 50年前の今日、アポロ計画により、1969年7月20日に人類は初めて月面に到達しその表面を歩きました。アポロ11号からアポロ17号まで、6度の月着陸を果たしましたが、それから約半世紀、再び人間が月面に立つ事はありませんでした。現代のロケットやそれを支えるコンピューターの性能は飛躍的に高まりましたが、月の探査はやっとここ10年で無人探査機が再び訪れるようになった程度でした。しかしながら、ここ数年で状況は大きく変化します。ついには中国による月の有人探査の計画が持ち上がりました。対する米国は、アルテミス計画という新たな有人月探査計画を発表し、2024年に再び人間を月面に送り込む計画を発表しました。民間ロケット会社や日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)や世界中の宇宙機関が月を目指します。2020年代後半から2030年代以降にかけて、月の周回軌道に、西側諸国とロシアの共同利用宇宙ステーションの建設も始まり、お茶の間の4Kテレビに月周回軌道からのライブ映像が見られるような時代がもうすぐそこまで来ているのです。
NASA_Apollo_17

 50年前のアポロ計画当時、世界中で天体望遠鏡が飛ぶように売れました。月面からの生中継や周回軌道からの極めて鮮明な月面映像や月面写真がお茶の間で見られるようになったにも関わらずです。地上から望遠鏡で月を見れば、とても鮮明に月面の様子が見られます。しかし月の軌道で写した映像や写真に敵わないのは自明の理。しかし途轍もない数の望遠鏡が日本から世界に輸出され、空前の天文ブームが起こり、多くの人が生の月面像を楽しんだのです。そしてその後、多くの数の天文ファンや天文学者、宇宙飛行士を世界中で産み出したのです。
これからの10年、20年は、単発的なアポロ計画のような月探査ではなく、月をゲートに太陽系全体へと有人宇宙開発が本格的に始まる『宇宙大航海時代』の第一歩になるのではないかと、私自身は想像しています。人類史の新たなる歴史の1ページの始まりとなるのではないか。そんな期待をしています。
レンズ研磨工場

 その中で地上から宇宙を見るこども達のための『よく見える天体望遠鏡』の役割は、ますます大きくなると考えています。望遠鏡を通してみる月面の様子や、土星や木星、その他の星達の輝きは、探査機や大望遠鏡に取り付けられらたカメラで撮影した映像とは違う、独特のライブ感と生の迫力に満ちています。自分で望遠鏡の向きを変え、視界に導き、ピントを合わせた時見えた天体の姿には誰しも感動するものです。そういう意味で、望遠鏡の役割はとても大きいと考えています。またその体験があって、そうした探査機や宇宙望遠鏡から送られてくる鮮明な画像をテレビやインターネットで見た際により観察力をもって楽しめると言えます。
『スコープテック』は、これからもこども達が初めて手にする望遠鏡を、ひとつひとつ大切に、本当によく見える天体望遠鏡を心を込めて作って行きたいと考えています。そんなこども達の中から、将来の日本人宇宙飛行士が誕生し、僕の叶える事が出来なかった夢である、「月面に立つ」という夢を叶える人が出てくることを願ってやみません。

望遠鏡組み立て1


 
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スコープテックとラプトル50のひみつ


スコープテック(旧社名スターライト・コーポレーション)が株式会社として登記されたのは、2006年7月20日。7月20日といえば、人類が初めて地球以外の天体に着陸した記念日である。もちろん、良質な天体望遠鏡を初心者に販売する会社として設立することもあり、その歴史的記念日に設立するというのは前々から計画あっての話だったりします。(実際は登記は2006年ですが、個人事業として、株式会社星の手帖社の軒先を借り商売を始めたのは2004年のことです。)
ラプトル50イラスト


 入門者用の望遠鏡は、当時も今も弊社の製品を除くとまともなものはとても少ないのが現状です。当時はほとんど無名であった弊社でしたが、今や10余年に渡る努力によって『スコープテック』は、国産の天体望遠鏡としては、日本一の生産販売数を記録するブランドとなりました。それも支持を頂いたユーザーの皆様のおかげで、感謝してもしきれない程です。

 望遠鏡の品質の向上に努めたのは、もちろんですが、同じ位力を注いできたのは、購入後のアフターサポートです。。フリーダイヤルを用意し、望遠鏡の使い方だけでなく、こどもたちを含む、初心者の素朴な疑問や、観測の相談にも丁寧に答えてきました。さらに乙女高原星空観望会や乙女高原星空観望会といった誰でも参加できる観望会を年に20回以上行っています。。各地の町おこし的な観望会にも手弁当で協力してきた。なぜここまでするのか。もちろん広報的な側面もありますが、一番は、一般の人に少しでも宇宙や夜空に興味を持って欲しいからという気持ちがとても大きい部分を占めています。

 弊社、スコープテックで最初に作ったのがアトラス80(旧名SD-80AL)でした。口径8センチの中学生以上向けの入門機でした。すべての要素を設計し、一から金型を起こし、このクラスの望遠鏡を作ろうとすると1000万円単位のお金が掛かってしまう。スタートしたばかりの小さな会社じゃとても無理なことです。でも品質の高い望遠鏡は作りたい。私たちはどうしたのか…。既存の金型を持つOEMメーカーを当たりました。そこで見つけたのがアトラス80の元になる数々の既存部品の金型でした。要素を組み合わせ、一台の望遠鏡をレゴブロックにより組み上げて行く。それを最終的な製品とするというs架台の構造に根本的な欠陥があり、上下に何回か動かすと架台がグラグラになってしまい、使い物にならない。そこを直すことから始まりました。レンズの精度は、日本製という事もあり抜群でした。しかし内面のつや消しは極めて不十分。月を見ると視野全体のコントラストが低下し、鮮烈な見え味とは言えなかった。対物レンズの精度が生かされていないのだ。さらにバッフルの位置が不適切で、80mmの口径が絞られてしまっている。既存のメーカーは、こんな商品を何十年も売っていたのかと呆れつつ、そうしたネガをひとつひとつ消していった。完成品検査も厳格な基準を新たに設けた。

 工場はとても優秀で、工員や職人の能力も申し分ない。しかし各メーカーの最安値の入門用望遠鏡を作る事が主要な仕事だったOEM工場。利益を出す事が求められる入門機。厳しいコスト的制約がある。20年以上の生産の中で、抱えた問題は解決される事なく、メーカー側で改良されることも無く、ただ言われた通りに安く生産する事を強いられてきたのである。

僕らのアプローチは違いました。第一義的に『よく見えて使いやすい入門機を作る』なにより中身を重視。ネットによる直販が主体なので、販売価格に対して原価率が上がっても一般流通ルートに載せなければならない既存メーカーよりコストをかける事ができるのです。初めて望遠鏡を手にするユーザーが使いやすく、天体がシャープにくっきり見え感動してもらわないとダメなのです。
 
 特に望遠鏡の鏡筒内部のつや消し塗装は、きちんとやるにはとても手がかかります。一方向からつや消し塗装を吹いても、遮光環の影に塗料は届かない。遮光環を全部取り付けてからでは、塗料が回らない。何度も何度も塗料を内面に吹き付けないと鏡筒内での乱反射は防げないのです。

 鏡筒のパイプの末端処理は、光軸に影響します。ここも仕上げを丁寧に行ってもらうようにしました。そうしたポイントを全てちゃんとやってもらうようにすると、同じ望遠鏡を作っても、弊社が作る8センチ屈折経緯台と、同じ工場で作られてきた8センチ屈折経緯台は、姿形は似ているが、工場出荷額は、かなりの違いが出てきてしまいます。見え味に関係ない外見はコストアップを避けるために、徹底的にコストダウン。望遠鏡を入れる箱も、既存メーカーは写真入りのカラフルな箱に入れる。うちのアトラス80は、ダンボールでいい。虚飾を廃し、実性能を重視する。これを徹底して出来上がったのがアトラス80なのです。外装、外箱でコストダウンを測っても焼け石に水。弊社への納入価格はベース機種に対してかなり上がってしまいました。

 アトラス80は、弊社の入門機用ラインナップの最上位機種。架台の強度が理想には少し足りないが、上下軸、水平軸に全周微動装置を使用した全部盛りの入門機といえます。月も土星も木星もとても良くみえる。アトラス80で見る月は圧巻だ。内部のつや消し処理とバッフル(遮光環)の位置を最適化し、組立精度を向上させた結果。黒い夜空に、ぽっかりと漆黒の宇宙に浮かぶ臨場感たっぷりの月の姿が見える。アクロマートレンズですが、工場で高精度で磨かれたレンズは、外国製の入門機とは一桁高い精度で仕上げられているため、別売りの接眼レンズで200倍程度で木星や土星を観察すると、中国製のEDアポクロマートよりもよっぽどシャープに見えるのも作った側としては、とても痛快でした。
望遠鏡の選び方のポイント

 次に作ったのは、ラプトル50です。弊社のラインナップで一番安価な望遠鏡。でも僕が既存のラインアップで、最も愛着があるのがラプトル50だったりします。ラプトル50は、コストがかけられるアトラス80と違い、こどもたちが、お小遣いを貯めたり、お年玉を貯めたりして買う望遠鏡という位置付けなので、とにかく安く作らなきゃいけない。見え味を落とさず、シンプルに徹し、徹底的に無駄を廃し、コストダウンする。配送料金だって出来るだけ安くしなきゃいけない。でも見え味と架台三脚の強度は確保し、滑らかに動く架台に仕上げなきゃいけない。アトラス80以上に、大変な作業と思考が要求されました。

 まず望遠鏡の筒の部分の外装塗装は省きました。パイプを引き抜いたときの引き傷があり、外観が見すぼらしいとの意見もありましたが、素材のプラスチック自体が白いし、素材の色を活かせばいいじゃない!コストダウンも出来るし、外装の塗装を省いても見え味は低下しません。重要なのは絶対外せない部分。見え味を向上させる部分に省いたコストを投入することです。他の会社の入門機ではいい加減な内面の艶消し塗装や遮光環は、絶対に省けないポイントです。
 天体望遠鏡は、倍率が高く視野が狭いため照準用のちいさな望遠鏡が脇についています。他社の入門機にももちろんついていますが、望遠鏡自体にコストを掛けられないため、像がぼやけてしまい狙いをつけるのも困難なひどい品質のものばかり、ファインダーを支持し角度を調整する取り付け部も酷い品質でした。ちゃんと使えるまともなファインダーを付けようとすると、その部分だけで3000円以上になります。こどもたちのために販売価格は上げたくない。他社のように形だけで機能しない使えないファインダーは付けたくない。色々と考え悩んだ末に、光学式のファインダー自体やめてしまおうという決定をしました。調整しないと使えないし、ちゃんと調整できるものを付けても、ファインダーの調整は入門者にとって、慣れないうちはとても調整が難しく望遠鏡を使わなくなる大きな原因の1つだったのです。まさにこども用の望遠鏡にとっては、諸悪の根源以外のなにものでもないと考えました。だったら光学式ファインダーなんてやめちまえ!代わりに作り出したのが、覗き穴式ファインダーです。後ろから覗いて、おもちゃの銃のように狙いをつければ、見たい天体が視野に入ってくる便利な仕組みです。そしてコストは大幅に下げられる。何しろ穴の空いたちいさな金属板二枚だけ!ですからね。
面倒な光軸調整の必要が無く、誰でも直感的に使える覗き穴式ファインダーは、結果的に大成功で、ラプトル50より先に発売されていたアトラス80にも、その後発売されるアトラス60やラプトル60といった入門機ばかりでなく、弊社が発売する上級者向け鏡筒などにもほとんど全てに採用される事になります。こどもたちに使いやすいものは、『全ての人にとって使いやすい!』の好例という事になります。

 ラプトル50は、最初にデビューした時には、今のスチールパイプ三脚では無く、木製の三脚でした。他の望遠鏡のために作られ、工場で20年以上眠っていた木の三脚でした。数百セットがあり、使い道が無かったため、工場側は産業廃棄物として近く廃棄予定でした。これを利用する事でラプトル50は、スチールパイプ三脚を採用する予定だった時は7980円で発売予定だったのですが、1000円も安く発売開始する事ができました。工場側からの話では、この木製三脚は売り切りで数百セットあるが、使い切ってしまえばもう再生産はできないし、もし再生産したとしてもスチールパイプより高額になってしまうとのことでしたが、思わぬ事で予定より1000円も安く販売することが出来たのです。

 その後ラプトル50は、こどもや入門者用の望遠鏡として、もっとも使いやすく良く見える望遠鏡という事で、世界天文年の際に公的機関から受賞したり、多くのベテラン天文ファンや、科学館やプラネタリウムの学芸員や解説者の先生に支持された事もあり、5万台以上のラプトル50が弊社を旅立ち、多くのこどもたちや入門者の元へ届きました。

 ラプトル50は弊社のラインナップで一番エントリーに位置する小さな望遠鏡ではありますが、『スコープテック』のブランドアイコンそのものであり、スコープテックのスピリットでもあり、弊社のフラッグシップなのです。私、大沼が一番愛してやまない望遠鏡が『ラプトル50』なのです。

追記 スコープテックがブランドとしてここまで来られたのには、お客さまのご支持が一番大きいです。他にも弊社社員のがんばりはもちろん大きいのですが、外部の支えもとても大きかったと感じています。創業期から今までは、阿部編集長率いる星の手帖社のみなさん。ミザールテックの伊藤部長、様々な助言をくださったビクセン光学の齋藤彰社長、スタークラウドの宮野さんなど沢山の皆さんの様々な助言や支援があっての事です。この辺りも皆さんにとって興味深い内容だと思います。いずれご紹介できたらと考えています。

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